飲食直後に歯磨きをすると酸蝕で歯が溶けた状態のため歯の表面が崩壊してしまうという説が世間を騒がせたことがあった。本研究では、単回炭酸飲料への浸漬による酸蝕が歯磨きによる歯の表面の崩壊をもたらす危険性があるのかを考察した。ウシのエナメル質標本を3,6,9,12分間5mLの炭酸飲料にそれぞれ浸漬し、原子吸光光度計で溶出したカルシウムの濃度を測定した。溶出したカルシウム濃度→溶出したカルシウムの総量→エナメル質単位面積あたりからのカルシウム溶出量→カルシウムの溶出した深度を計算した。その結果、唾液の再石灰化能により修復が可能な範囲内に収まっていることが明らかとなった。このことにより、炭酸飲料の単回摂取後、直ちに歯磨きをしても、唾液の再石灰化能による修復が及ぶため、歯の表面が崩壊することはないことが示唆された。