コーヒーの酸味は品種によって異なる以外に、焙煎の程度によっても変化し、浅いりは酸味が強く、深いりにすると苦味が増すと言われている。焙煎の進行に伴って遊離酸が増加してpHは低下し、メディアムで最低のpHとなった後、遊離酸は減少してpHは再び上昇することが確かめられている。 このpHと遊離酸の変化はコーヒー焙煎中に起る多数の複雑な熱的反応の綜合的結果として現わるもので、緩衝作用の変化、既 存の有機酸の分解、種種の前駆体からの酸性や塩基性物質の生成等が考えられている。コーヒーの有機酸としては、クロロゲン酸などのフェノール性カルボン酸の他に、23種 の揮発性および不揮発性の非フェノール性カルボン酸が報告されている。クロロゲン酸類は焙煎によって著しく減少するのに対して、非フェノール性カルボン酸の量は焙煎で増加することから、焙煎によpHの変化には非フ ェノール性カルボン酸の変動が大きく影響しているものと考えられる。